シェイプシスターララバイ
形はなくて。
けれど螺旋だけは目の裏へと堕ちていくの。
虚構を通り過ぎていく風の音を周りは怖がる。
でも私にはそれが心地いい。
この星には、何もなくて。
形もなくて。
風にも水にも形はなくて。
だから、何者でもない私を受け入れてくれるのだろう。
この星は。
静かなようで
騒がしくて
騒がしいようで
落ち着いている。
印象に流れ込んでくる色も音も
すべて私を包み込む。
漂い、揺れて享受していく。
色にも、名はない。
何色でもない色が焼き付いて離れない。
なぜなのか。
焦がれるようにその色を、
星を、求める。
姿を変えて。
冥王星。
砂と風と水と、形のない私だけが
ここに閉じ込められている。
深くて重いしっとりと乾いた風が
私の変温する皮膚を撫でていく。
星が、近い。
四つの手足でこの星の体を感じられる。
いつの間にかこの星から離れられなくなっている。
この星が、彼が、離してくれないの。
幸せだった。
会いに来るつもりはなかったの。
でも
抑えきれなかったの。
会いたくて。
昔誰かから聞いた気がする。
星はいつでも愛せる人を探していると。
彼が愛してくれるのが私ならいいのに。
私のこの頭頂眼には、なによりも愛すべき星が焼き付く。
雲とバニラ色の彼の体が、
どうして青い星に忘れられてしまわなきゃいけなかったんだろう。
あの青い星に帰るつもりはもうないの。
銀色のウエディングドレスで
彼とひとつになりたいの。
彼がくれた五億の星屑が
銀河に瞬いて火が付いたように明るく見える。
ふたり寄り添って
形のない愛を育むのね。
ここにいるわ。
たとえ体が朽ちてしまっても
たとえ命が終わっても
私の心はきっとずっとあなたのそばに。
星の群れが消えて
また新しく生まれても
私は
きっとこの星で。
🐍
0コメント