記憶

半年ぶりに実家に帰った


年暮れだからだ

20年近く過ごした自室に帰る

家を出てから一切の手付かずの様子だ

何も変わって居ないのに
それなのに
なにかが変わっている気がするのは
僕が成長してしまったからだろうか

2014年で止まったカレンダー
しかも好きな風景画のものだ

長崎旅行で買ったほっぴん

受験の時に世話になった参考書の山

集めて居た雑誌

高校最後の舞台で使った小道具

そして壁一面の本

嗚呼これが想い出なのかと

じわりと淋しさとも侘しさとも言えない不思議な感情が動いた

家族こそ変わらないもののような気がする
だけど
この部屋自体は少しだけ変わってしまったような気がする

人は変わるものだというけれど
人は案外変わらないのかもしれない

むしろ変わるのは
物だ

と、そう思う夜更け


遠くで車のエンジン音が聞こえる


今年も終わるのだと妙に達観した


薔薇と脳髄の向こう

感嘆と共感と畏怖。共に彼岸へ向かおう。