青春という。
冬籠り、春さり来れば。
桜は二部咲き程だっただろうか。
速度の遅い電車が山の間を縫うように小さな振動とともに走る、長閑な場所だったと、記憶している。
山と山の間の、朽ちの足音がゆっくり忍んでくるような、そんな木造の校舎に、僕たちは居た。
木漏れ日と一緒にてんとう虫が教室の中へやってきて、女子達は驚いて逃げてた。箒とちりとりで追い出して、それでやっと再び休み時間の安らかな時間が戻る。
剥がれかけた掲示物を誰がなおすわけでもなく、古びた机も椅子も誰がいやがるわけでもなく。僕たちにとってはそれがきっと当たり前だったから。
ずっとこのままなんじゃないかと思うくらい、平穏で慣れ親しんだ時間だった。
でも確実に僕たちは、永遠の終わりに向かって歩いて居たんだ。
部活に行く友人の背中を見送って、黒板を消す友人のスカートの裾に目が行って、ベランダではあの子達が話をしていて。
毎日、そんな感じだったから、余計に終わりを想像できなかった。
はるいろが、僕たちを優しく包んでいた。
忘れないように、忘れかけていたあの頃のいろを思い出せるように、僕は今こうして文字に起こしている。
先生の死角に入るように前の友人の背中に隠れて授業を受けた。
昼食はいつもベランダで食べてた。
テストは、やる気がなくていつも寝てばかりだった。
テスト前に消しゴムを友人に貸した。
野菜ジュースが、クラス内で流行ったっけな。
なんて事ないはずなのに、思い出して、もう戻らない時間に焦がれる。
でも確かに、僕たちは、あのクラスで青い春を過ごしていたんだ。
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