無題
見えてないだけでしょ
椅子も机も窓も 突然踊りだすの
足を切られて 手をもがれても 彼らは楽しむ
ヒトにはわからない
頭を飛ばされたって それはクリスマスなだけ
なかみをみてほしい わたしのなかみを
どうして赤を嫌がるの 流れるこの血を
どうして穢れだというの
本だって切れば血が出るの 知らないだけよ
墓場で結婚式を挙げて 相手はとうにこの世にいないけど
メリーゴーランドはいつも孤独
ヒトはその孤独に乗って楽しむのね
極彩色の没入感は白い空を生む
あなたの爪の数はいくつ
ギリシア神話に連れて行って
蝋燭は蜘蛛の巣でいいの 燃えなくっていいのよ
あたしの中身はきっとジェリービーンズね
脳味噌は綿菓子なの
どう、嫌いになってくれたかしら
ワインの中には豚の血液
みんなに愛されたあたし脱ぎ捨てて
雲の亡霊に魂を売ったの
明日を捨てて 色をもらった
暗い森は 明るい街のネオンと同じ
レクタㇺの中にはあなたの骨
ピンク色の地平線を あたしは歩く
体を捨てても
あなたの目の中に
愛について
それがなんだとしても
エンターテイメントでしかないものは 恋
皮肉なもの 全てこの世は 皮肉でできてる
死ぬことさえも掠り傷よ
恥の多い生涯です
こうやって生きていく
暗闇も 幽霊も 母親も 災害も 宇宙も
何ももう怖くなくなってしまった
愛について
怖いのは自分自身だけになった
愛について
もう何一つ思うものはない
永遠の愛なんて二度とないのだから
処刑は娯楽だ
苦しむことは正の感情
彼の月命日には 口紅をあげよう
一度も付けたことないだろうから
火星まで飛んじゃっても 構わない
甘い人生でした
深夜の二時にしか 処刑は行えない
飾るのも 装うのも
支援物資は 金木犀のかけら
ぎらぎらの蛍たちは 長生きする
カプセル薬を手放せない
乱反射しながら 朝を歩く
こうして居場所が認められる
夜明け前ほど 熱い時間はない
桜が冬に咲いたらどうしよう
また春がすぐに来てしまうんだ
泣き出しそうな君の手を引いて
走り出してしまったのが間違いだった
季節と同じで ずっと繰り返したまま
僕は何度も君を殺してしまう
割れたビー玉は戻らない
かけらを拾い集めても
君の手のぬくもりをいつも 思い出せない
鮮やかに記憶の中には刻み付けられてるのに
蜃気楼に映った残像みたいに
僕の宇宙はビー玉の中
吸い込まれたまま
却ってこなくなった
詩集 刺繍 死臭 始終
何も怯える必要はありません
当たり前のことなのですから
木造建築は いつか廃れるでしょう
栄えた国家は いつか壊れるでしょう
人気のアイドルも いつかは老いるでしょう
永遠は 生きている限り ないのです
いつか愛は冷めるでしょう
曖昧なまま生きたって
ありあまる富だって
亡霊が弾くピアノが 一番いい音を奏でます
理科室の骸骨は 永久就職です
何も怯える必要はありません
何も恐れる必要はありません
のぞき穴の向こうと目が合った
そしたら 異世界に飛んでいける
ありがとう ありがとう
目玉一つくらい 安いものだね
日常から逃げられるなら
つまらない つまらない
無の時間ほど
丸焼きのチキン
冬はツンデレだから たまには優しくしてよ
自動販売機にもたれていると
直ぐ焼きもちやくから
お正月は紳士なのにね
でもそれでいいから
ちゃんと 優しくもしてよね
世界を這い回る 大きな竜は
きっと僕を探している
一年前に悩んだことを覚えているのかと
背骨から食べてくれるらしい
向日葵とダンスして
透明なジュースは風の味がするね
物語の始まりは まつ毛の上から
自分の心と折り合いをつけて
僕は竜と対峙する
雷の音の心臓は早くなって
暗闇だけが優しかった
僕に同情しない竜は 空虚な目を瞬きした
僕は君の影を追い続ける
もう見えない君の影を
冬のにおいはすぐわかる
淋しいにおいだから
夏のにおいもよくわかる
まとわりつくにおいだから
春のにおいは気づきやすい
繰り返すにおいだから
秋のにおいは忘れられない
貴方がいないにおいだから
過ぎた季節ばかりが恋しくなる
もう戻らないのに
落ちた枯葉は 消えるだけ
記憶も同じ
魂まで棄ててしまう
それでも季節は廻り続ける
堕ちた死神は数知れず
思ったよりも生きやすい
人の寿命は短いけど
それでも彼らは 生き続ける
記憶という形をとりつつ
死してなおも生き続けるのが
人間というもの
死神人生
娯楽の消費をしながら
人間を刈るもの
それは案外つまらない
人間のほうがよっぽど
楽しそうに生きている
街を眺めては そう思う
筆を執る
流れる言葉は 負のカンジョウ
閉じ込められた檻の中
普通じゃないといけないのか
流れる水は 雪解け
希望はすぐに消える
絶望の味に魅入られてしまえば
領収書をもらうのは
いつの間にか癖になっていた
このまま大きな水槽の中で
スパナを片手に
水槽を割る
水が溢れて
きっと私はもういない
単純なものほど明快なのさ
そういった彼は 複雑だった
明快でいなくてはいけない理由は何
ヘッドフォンから般若心経
窓の外の大きな目玉は思っていたより優しげだった
部屋の片隅には毛受厳
和気藹々
私は蚊帳の外
パソコンの中から助けてと声がする
半分は死んでいる
思考はしていない
単純なことだ
彼はもう死んでしまった
それなら私も連れて行ってくれればいいのに
迷い込んだ吸血鬼の城は
思ったよりもずっと桃源郷
鮮血のにおい
埃のにおい
バイオリンの音色
天鵞絨の絨毯は緋色をしていたわ
名前を呼んでほしいと
彼は言った
月のワルツを踊りながら
深い深い森の中で古城は眠る
薔薇の赤は血の赤なんですって
私の血でも薔薇を作りたいと
彼は言ったわ
黒いドレスを着て今日も彼のもとへ行く
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